今回は不動産に特化した投資型クラウドファンディング「CrowdRealty(クラウドリアルティ)」を運営している株式会社クラウドリアルティの法務・コンプライアンス部長 田中義紀氏と法務・コンプライアンス部 弁護士 水井 大氏にインタビューを行いました。
株式会社クラウドリアルティは、京町家再生や太陽光発電の施設、医療福祉のプロジェクト、コワーキングスペースといった多彩なファンドを 組成し、投資家から支持を集めています。
また、2021年春までには「CrowdRealty」は「soils(ソイルズ)」へと名称変更されます。もちろん、名前が変わるだけでなく、新サービスもリリースされるため、投資家は新たな金融体験をすることができるでしょう。
今回はそんな株式会社クラウドリアルティの現在と、これからの展望などを伺ってきました。
株式会社クラウドリアルティについて
まずは株式会社クラウドリアルティ(以下:クラウドリアルティ)の基本情報を紹介します。
クラウドリアルティは2014年12月に設立された、投資型クラウドファンディング「CrowdRealty(クラウドリアルティ)」を運営している企業です。
クラウドリアルティの代表取締役・鬼頭武嗣氏は、ボストン・コンサルティング・グループ、メリルリンチ日本証券投資銀行部門を経て、2014年12月にクラウドリアルティを設立しました。
また、鬼頭武嗣氏は、一般社団法人Fintech協会代表理事副会長や内閣府革新的事業活動評価委員会委員などの役職を務めており、海外のクラウドファンディングやFintech業界の最新情勢に精通しています。
クラウドリアルティの案件については、概ね2ヶ月に1件程度リリースしており、京町家再生プロジェクトや保育園、さらには海外(エストニア)の不動産案件など多彩な案件があるのが特徴。
今後は、クラウドファンディング事業者としてだけでなく、証券取引機能や投資銀行機能を提供するBaaSプラットフォーム事業者としての存在感も増すことが期待されています。
クラウドリアルティの事業・商品について
クラウドファンディング事業に進出したキッカケは何でしょうか?
水井:代表取締役の鬼頭は、メリルリンチ在籍時に不動産Reitの組成・募集に関わっていたのですが、不動産Reitのようなプロ向けの市場ではなく、「もっと一般の人が不動産投資にアクセスできる環境をつくりたい」という思いから、クラウドリアルティを設立し、クラウドファンディング事業に進出しました。理念としては、限られた投資家や資金需要者だけでなく、一般の投資家・資金需要者もアクセスできるような開かれた資本市場にするという「資本市場の民主化」を掲げています。
不動産証券化商品という、独自性の高い投資商品の強みを教えてください。
水井: できるだけ不動産からのリターンやゲインを投資家に還元する仕組みを構築しています。
クラウドリアルティは、2016年にサービスを開始されました。この4年間の運営の中で、成功した点は何でしょうか?
水井:初期の段階から、京町家再生というオリジナリティのあるファンドをシリーズ化して組成・募集することで、社会貢献や社会問題解決というコンセプトを打ち出しつつ、その様なコンセプトのファンドを組成できている点は成功だと感じています。
では逆に、4年間の運営の中で思うようにいかなかった点は何でしょうか?
水井:私たちのファンド組成は1からハンズオンで創り上げていくので、どうしても組成に時間が掛かってしまいます。もう少しスピード感を持って、組成や募集打ち出しができたらな、とは感じています。
不動産投資型クラウドファンディング、ソーシャルレンディングとの違いをどのように意識されていますか。
水井:ソーシャルレンディングは、貸付金利によるリターンは固定です。一方、不動産投資型クラウドファンディングは、不動産の運営資金を元手に返すため、リターン・ゲインが上下する仕組みを構築しているものだと理解しています。
2020年のコロナショックの影響はありましたか?
水井:どうしても個人投資家の買い控えが見られ、募集成立に至らない案件(大阪の谷町6丁目の案件)が出てしまいました。大阪の谷町6丁目の案件は、民泊施設の建築資金を集めるプロジェクトだったのですが、インバウンド需要の低迷を受けてなかなか厳しい状況にありますね・・・。また、宿泊の案件だけでなく、飲食の案件も宿泊よりは比較的軽微ではありますですが、影響はありました。
外部SNS運用をする目的は何でしょうか?
水井:当社の案件は、京町家再生から医療福祉のプロジェクト、太陽光発電の施設、宿泊・飲食などバラエティ豊かです。つまり、案件ごとに思いやスキーム・業態が異なるので、同じクラウドリアルティが提供しているものでも、案件ごとにターゲットが全く異なるんですね。そのため、個別の案件毎にペルソナを定め、そのペルソナに沿った人へSNSを使って、個別にアプローチをしていくことが必要になります。
クラウドリアルティの案件について
募集を行うと投資家から人気が出るのはどういった案件でしょうか?
水井:京町家再生や太陽光発電、コワーキングスペース等の案件が人気がありました。それらの案件は、投資家としても分かりやすいと感じるからではないでしょうか。
案件の審査はどういった体制・プロセスで行っていますか?
水井:プロセスとしては、商品組成会議をした後にプロジェクト検討会議を行います。プロジェクト検討会議にて、法的なことや事業性、財務状況などをチェックし、社内で承認が取れたら、募集を打ち出していきます。
案件はどのように探しているのでしょうか?
水井:既存の起案者からの紹介が3割程度、起案者からの直接問い合わせが7割程度といった感じです。京町家再生をシリーズ化できているのも、起案者からの紹介があったからです。
今後はどの程度の規模の案件を取り扱う予定でしょうか?
水井:規模は数千万円(2,000万円~5,000万円)程度の規模のファンドを出していく予定です。
soilsについて
「CrowdRealty」を「soils(ソイルズ)」に変更する意図や背景などをお聞かせください。
水井:一言でいうと、機能追加に伴うリブランディングです。
具体的にはどのような機能を追加したのでしょうか?
プライマリー市場において、金融機関などに使ってもらうBaaS(バース:Banking as a Serviceの略)を追加しました。
BaaSとは何でしょうか?
水井:BaaSとは、「サービスとしてのバンキング」という意味で、バンキング機能を他社にシステムとして提供するというものです。提供先がバンキングのライセンスを持たずとも、BaaSを使えば、バックにライセンスホルダーである金融事業者がいるため、バンキングとしてのサービスを提供できるようになります。 当社は主として証券募集時のBaaSシステムを提供していきます。
クラウドリアルティのBaaS=提供するシステムについて、もう少し詳しく教えてください。
水井:当社は「ビッティング(入札)の機能付きの証券募集をする際のシステム」を開発し提供していく予定です 。証券募集システムだけであればどこでも開発することができますが、「ビッティング」の機能を付けました。
ビッティングの機能が付くとどうなるのでしょうか?
水井:商品の価値を市場に決めてもらうことができます。例えば、現在、有価証券の価値は、募集取扱業者と発行体と間でほとんど決まると言っていいでしょう。しかし、「それって本当に適正なの?」とフェアバリューへの疑問があります。そして、価格を公正に決められる手法として「入札」があります 。当社で提供するBaaSではビッティング機能を使うことができますので、「利回り◯%だったら出資する」と投資家からの需給調査を行い 、システム上で 「投資家はこの商品をいくらくらいと評価している」という需給情報をどんどん集約していくことができます。もう少し簡単に言うと、「この商品はいくらだったら投資家は買うのか」というアンケート調査をすることができるんですね。
アンケート調査のようなことができるんですね。
水井:はい。そして、最終的には、集約された投資家からの情報から「この価格・利回りだったら市場は評価するし、投資家は投資をするだろう」という価格・利回りなどの条件を決めることができます。このように、当社のBaaSを活用すれば、「最低出資金額が1口20万円で利回りは5%」などと発行体が条件を打ち出すのではなく、公正な資本市場のなかで、商品の価値を確定してもらうことができるんですね。
ビッティング機能により、資本市場に商品価値を決めてもらうことができるのですね。
水井:そうですね。また、株式や現物不動産に限らず、例えばクリプトアセットん(暗号資産)ともビッティング機能は馴染みやすいです。クリプトアセットはなぜその価格が形成されているのか、根拠が見えにくい面がありますからね。このように、当社BaaSシステムによるビッティング機能を活用できるのは金融商品だけにとどまりませんので、色んな事業者に使って欲しいですね。
投資家視点でビッティング機能を見ると、自分たちの声を価格形成に反映させることができるというになりますね。
今後について
今後1年、3年での取り扱い件数、累計募集金額、会員数などの目標があればお聞かせください。
水井:クラウドファンディング案件は毎月1本(募集金額5,000万円程度)、BaaSは毎月1社程度に提供していきたいと考えています。投資家登録数については来年上半期で1万人を超えたいですね。
最後に投資家への方へのメッセージをお願いいたします。
水井:これからBasSが提供する新しい金融体験を是非お楽しみください。
取材を終えて
クラウドリアルティの案件の中で、京都好きな筆者としては、個人的には京町家再生シリーズが特に魅力的に映りました。自分が投資した資金が、京町家の再生に使われると思うと、儲かる儲からないの視点ではなく、自分の投資資金で京町家をより魅力的な不動産にして欲しいという視点から、投資がしたくなります。
もちろん、クラウドリアルティの案件は京町家再生シリーズ以外にもさまざまあります。クラウドリアルティは、BaaSを推進しつつも、クラウドファンディング事業も引き続き展開していくそうです。もし、クラウドリアルティの案件に興味を持ったら、まずは会員登録からでもしてみてはいかがでしょうか。